3-2)動的分析(Dynamic analysis)
3-2) 動的分析(Dynamic analysis)
動的分析(Dynamic analysis)は、その事実認定された発明を視点・視座・視野を変えて様々な観点から評価し直す行為である。
ここでは、発明者が認識していなかった課題、共通項、構成の組み合わせによる新たな効果などを拾い出し、発明を見出す。
そして、見出した発明の水平展開と上位概念化を試みる。
このために各構成要件の代替技術を列挙する。当初与えられた構成要件の要素技術と、その代替技術を共通項でくくった最大公約数的概念が、上位概念化された発明の構成要件となる。
さらに、発明の種類を検討する。上記分析により把握された構成要件群が、物の発明である場合、その作用効果に着眼し、方法の発明として把握できるかを検討する。
ここで、方法の発明は、当該物の発明が奏する作用効果を、純粋方法としてみることができるか、という視点と、当該物の発明を生産する方法の発明が存在するかという視点がある。なお、当該物を使用する方法の発明も認識できる場合があるが、それは、発明保護の上ではあまり重要ではない。当該物に限定され、物の発明を保護すれば十分だからである。
ここまでにおいて、把握される発明は、発明者が「主観的に」発明と感じた発明であり、特許性まで吟味した、客観的な発明ではない。そこで、この段階で、従来技術との対比をする。
従来技術と構成要件において、差異がない場合、新規性のない発明として登録要件を満たさないので、その場合は、相違点が出るように、構成要件を「限定する」必要がある。
次に、例え相違点があったとしても、それが創作容易であるとされるなら進歩性なしとされるので、どの程度の差異があるのかも検討はしておく。
以上の吟味が終了した後の、発明の構成要件こそが、特許請求の範囲に記載すべき発明となるわけである。
3)評価しなおした発明を、公知技術や競争相手、商品戦略等自社の事情に応じてどのように保護するのが最適かを考えてクレーム化する行為である。
ここでは、公知技術を参酌して、どの範囲で権利化が可能か、自社技術を保護する上で、どの範囲が最適か、他社技術を牽制する上でどの範囲が最適か、などを考慮する。
https://gyazo.com/f16107cb1e2765022fc9850eb1854a2a
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https://gyazo.com/87df5cd34de24e5dae4ca0fe39fb94ce
https://gyazo.com/0decddae1059e90f9f7004a9e925fc95
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https://gyazo.com/0316bc70af1893cca0455e54f356f5f2
https://gyazo.com/03a3c9e55878cae704806be9ddc2f28b
Wクリップの動的分析をしてみよう。
★クリップ本体(板ばね、背板、一対の側板、三角柱)
板ばねからなる三角柱形状(断面が3角形)で、長方形の背板と、その背板の長
辺である両縁に連結された側板とからなる
★クリップ本体の作用効果
1開口端で側板が開き、クリップ本体のバネ力で紙片等を挟持する。
紙片を挟持するためには、開口端で側板間が開けばよいわけです。板ばね性を有 し、開口できれば紙片を挟持できます。挟持 → 一対の側板 → ばね力で紙片 を挟持する一対の挟持部。
板ばね→クリップ本体は、背板と側板とそれらを連結する連結部のいずれかが少
なくともバネ性を有している必要がある。側板部がバネ性を有しない単なる板で、
背板が板ばねであってもよい。
2挟める紙片の枚数は、側板の開き幅(背板の幅)で決定される。
このような開き幅を既定できれば、背板、一対の側板とからなる三角柱形状であ
る必要はない。
★回動支持部 クリップ本体は、一対の側板間の三角柱の一辺が開口して、その各側板開口端
に、レバーの回転軸を回動自在に支持する筒状の回動支持部を一対有する。
★回動支持部の作用効果
回動支持部は、レバーの回転軸を回動自在に支持する。→
回動支持できれば、側板開口端である必要はない。但し、回動支持部に挿入され
た回転軸が作用点となって、一対の側板間が開くので、回動支持部は作用点から力
を受けて、側板を開口させることができる位置とすべき。
★反転点(死点)
一対の回動支持部の回転軸挿入端面は、斜めにカットされることで、回動するレ
バーが乗り越える反転点(死点)を有する。
反転点(死点)をレバーが乗り越えて、側板側に倒すと、レバーが側板に沿って
立つ。
反転点(死点)をレバーが乗り越えて、側板反対側に倒れると、レバーが合わさ
る。側板間に挟まれた紙片に沿ってレバーが倒れる。レバーは紙片に沿っているの
で、邪魔にならない。反転点はレバーの回動位置を既定する。→本来の目的とは関
係がない
★反転カール部 一対の回動支持部間の、側板開口端に、側板端部を反転させて弯曲させた反転
カール部を有する。
紙片を側板間に挿入する際のガイドとなる。→ 本来の目的とは無関係
★レバー(回転軸、弯曲部、ばね性を有する針金、ハ字状)
両端にクリップ本体に回動自在に取り付けられる回転軸を有し、中間部でリング
状に弯曲(弯曲部)して反転し、ばね性を有する針金で全体としてハ字状に形成さ
れている。
レバーは弯曲部が側板より大きく外に張り出し、この状態で一対のレバーの弯曲
部を力点として押圧すると、レバーと側板との当接部が支点となり、回動支持部に
挿入された回転軸が作用点となって、一対の側板間が開く。
レバーは、側板を開くために必要。側板開くための「てこ」→針金、ハ字状であ
る必要はない。下図のような板状でもよいし、棒状でも可。
回転させる必要がなければ、側板に固定でもよい。
回転させる場合は、回転軸は必要
Wクリップの動的分析表
https://gyazo.com/ef8e479b81e511b7bcab3e7083f27903
W クリップの参考クレーム
【請求項1】互いに対向する一対の狭持部、及び、各狭持部の一端を連結する連結部 からなり、一対の狭持部及び連結部の少なくともいずれかの部分が板バネ(弾性を有 する板状体)にて形成されてなるクリップ本体と、
各狭持部に一端が接続され、他端が連結部を越えて外方へと延出し、一端を作用点、 他端を力点とし、連結部近傍のクリップ本体部分との当接部を支点とした一対のレバ ーと、
を備えることを特徴とするクリップ。
【請求項2】前記クリップ本体は、狭持部、連結部がそれぞれ板状をなし、被狭持物 を狭持していないときに、各狭持部の他端同士が、互いに当接して、断面3角形状を なすことを特徴とする請求項1記載のクリップ。 【請求項3】前記各レバーの一端が、前記各狭持部の端部に回動自在に係止されてい ることを特徴とする請求項1または2記載のクリップ。 【請求項4】前記レバーは、両端に回動軸を有する針金からなり、前記各狭持部の端 部にレバーの回転軸を回動自在に挿入させる筒状の回動支持部を一対有し、一対の回 動支持部の回転軸挿入端面は、斜めにカットされることで、回動するレバーが乗り越 える反転点(死点)を有し、反転点(死点)をレバーが乗り越えて、狭持部の反対側 に倒れると、狭持部間に挟まれる被狭持体に沿ってレバーが倒れることを特徴とする 請求項3記載のクリップ。
従来例との対比による限定(絞り込み) 当初は従来例を気にせずできるだけ拡張してみて、その後従来例との関係を検討す
ることが懸命であり、そのようにすることで従来例に引きづられ発明の範囲を適正レ ベルまで拡張できないという事態を回避できます。
https://gyazo.com/ef081b92eb9e1283b43f25890f9e188e
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https://gyazo.com/ef5a2d489d451aae40f1d89187041d80
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